わん太郎読書日記

趣味で読書をしています。興味を持ってもらえたらうれしいです。

「君が手にするはずだった黄金について」行き過ぎた承認欲求

小川哲/新潮社/本屋大賞ノミネート作

あらすじ

高校の同級生が投資詐欺で逮捕された。

この小説は、承認欲求に飲み込まれ一線を超えてしまった人たちの話。

 

感想

ここに登場してくる人物たちは、私だったかもしれないし、

あなただったかもしれないと思わずにはいられない。

 

誰かに認められたいという欲求は、人間にあるあたり前のもの。

 

この無限に広がる無意識の性。

 

他人軸ではなく自分軸で生きろと言うけれど。

 

だが、それを意識している時点で、既に他人と比較しているということではないか。

どうしたって、認めてもらいたいというのが本当のところではないか。

 

登場人物たちは、嘘をついてまで周りから認められたかったのだ。

 

欲求を抑えて生きる偽りの自分、偽りの成功だが欲求を満たそうとした自分。

自分への偽りか、他人への偽りか。

 

読み進めていくうちに、じわじわと着実に読み手の承認欲求を刺激してくる。

 

あなたの中に押し込めて、ないものとしていたそれに気づくかもしれない。

 

あなたは、何を認めてもらいたいですか。

そして、本当は何を認めてもらいたかったですか。

 

そんなふうに、登場人物から、

いや自分自身から問いかけられているような小説である。