わん太郎読書日記

趣味で読書をしています。興味を持ってもらえたらうれしいです。

逆ソクラテス/小学生の世界ってこんなだったな。

伊坂幸太郎集英社文庫/短編全5偏

 

感想というよりエッセイです。

 

だから、ちゃんと表明するんだ。僕はそう思わない、って。
君の思うことは、他の人に決めることはできないんだから。
引用:逆ソクラテス/伊坂幸太郎/集英社文庫

 

「え~、ひどい~」教室がざわついた雰囲気になった。
私の感想文を目にしたクラスメイトの反応だった。

 

中学生ぐらいのときだったか道徳のような授業があった。

 

「自分が困ったときに助けてくれたのは
自分の味方だと思っていた人ではなく敵だと思っていた人だった」
という例をあげ、先生は仮に嫌いな人が困っていたら、
助けることができるでしょうかという質問を生徒にし感想を書かせた。

 

そしてクラス全員の感想文(名前をふせ)を載せたプリントを配ったのだ。

 

私は直前にクラスの子に嫌なことをされ感情のおもむくままに、
「自分の嫌いな人を助けることはできないと思う」
と言いきってしまい、結果そんなことを書いたのは私だけとなった。

 

みんな正解とされる感想文を書いていた。

 

普段は自分の気持ちを飲み込むことが多かったが、
そのときは言葉を前にして感情を誤魔化すことができなかった。

 

先日「逆ソクラテス」でこの言葉を目にしたとき、
ふとあのときの苦い思い出がよみがえった。

 

あれから大人になり建前と本音をそれなりに使い分けられるようになった。

 

ただ思うのだ。生きやすいような生きにくいような世界で、
戸惑いや納得ができないことがあったとき、
自分の内側にだけはせめて自分の本心を訴えたいなと。

 

なぜなら、自分の本心って自分でしか消化できないと思うから。
見てみないふりをされた感情はいずれ蓄積され自分を苦しめると。
だからちゃんと認めてあげたほうがいいと思うのだ。

そして、どれだけ自分の本心と向き合い自分を理解できるか、
その深みが他人を理解することと比例しているとも思うから。

自分を見失わないように、そして他人の気持ちを想像できるように、
どんな自分の気持ちも、せめてこころの内側に訴えたいと思うのだ。

 

あなただけの訴えたいこと、こころに隠れていませんか。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。                                       もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです☆

 

「近畿地方のある場所について」このホラーがすごい!2024年版 宝島社 国内編第1位

背筋/KADOKAWA

あらすじ

編集者小沢は近畿地方のある場所で起きた過去の様々な怪奇現象についてオカルト雑誌で特集を組もうとしていた。だがそれらに関連する過去に掲載された記事を収集する中で小沢が行方不明になってしまう。一緒に仕事をしていたライターが小沢を探すため情報提供を求めていく語りと、その過去の様々な記事を掲載する形をまとめたのがこの作品となっている。

感想

最初にお詫びを申し上げますが、この作品が想像以上に恐ろしく最後まで読むことができませんでした。全部は読んでおりませんが、私なりの感想をお伝えできればと思い投稿させていただきます。

この小説は、近畿地方のある場所という接点以外は何のつながりもない怪奇現象話が時系列もばらばらな形で紹介されていきます。行方不明事件や幽霊目撃情など短い話が多数出てきます。最初は軽い気持ちでよくあるオカルト話かなぐらいで読んでいましたが、読み進めるうちに何ともいえない不気味さが私の中で増殖しはじめ自分自身を乗っ取られるような恐怖を感じたんです。ただ頭ではもう読むのを止めようと思っていても真相を知りたいという自分もいて直ぐに読むのを止められた訳ではないのですが、さすがにこのまま読み進めては危ないなと身の危険を感じ途中で読むのを止めることにしたのです。ただのオカルト話にしては妙にリアリティがあって生々しく、その話に込められている人間の想念みたいなものがべっとりと染みついている感じなんです。私もこの本の中に潜む何かに取り込まれそうになっていたのかもしれません。見たくないものを見てしまったような後味の悪い、ある意味ホラー小説としてはすばらしい作品なのかもしれません。

簡単で申し訳ないですが、以上で私の感想とさせてもらいます。

注意事項

あくまでもご自身の選択で読書をお願い申し上げます。

少しでも心身に不調を感じたら読むのをストップしましょう。

最後に

掲載記事を使ったり語り口調という方法で作品化された小説は新鮮味がありました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです。

「夏への扉」時空を超えた逆転劇

ロバート・A・ハインライン/福島正実訳/早川書房

あらすじ

技術者の主人公は親友と一緒に会社を起ち上げる。主人公の発明品はヒットし会社も順調だったが、親友に発明品と会社そして恋人まで奪われてしまう。さらに、冷凍睡眠で30年後の世界へ送り込まれてしまうのだ。主人公は、冷凍睡眠から目覚めたあとタイムマシンを使って30年前の世界へ戻り発明品を取り戻そうとするのだが・・・。

感想

この小説は、冷凍睡眠(未来で生き返る)とタイムマシン(過去へ戻る)という2つの方法を使って物語が進んでいく。

親友から裏切られた主人公が、タイムマシンを使って30年前に戻り失ったものを取り戻しにいくという話を読み進めていくうちに何故かどんよりとした違和感を感じた。

この違和感は一体何だろうと考えてみることにした。恐らく現実は過去に戻りたいと思っても戻ることは絶対にできない、戻れたらと考えたところで意味がなく虚しさだけが残る、だから例え小説だとしてもタイムマシンを使った成功体験を否定したいという思いが違和感の正体なのだろうという考えに至った。

 

そんなこといったらSF小説が成り立たないという話だが、私の本音としてはそうなのだ。

ただ、冷凍睡眠で30年後の世界に送られてしまったあとタイムマシンで30年前に戻ったということは本来の世界に戻ったということにもなるのかもしれないが、30年後の主人公と30年前の主人公が同じ時空の世界に存在しており、時空を超えて未来の主人公が過去の主人公を助けていること自体がやはりあり得ないことなのだ。

 

全くもって頭の固い私の勝手な感想なのだが、今の世界にはないタイムマシンを使用することで成り立つ主人公の逆転劇を羨ましく思う一方で、そのタイムマシンがない現実世界ではどう後悔する過去と折り合いをつけていこうかと考えてしまうのだ。

 

ただあり得ないかもしれないが、何らかの方法で未来の私が今の私を助けにきていることがあるのではないだろうか、気付かれない方法で。そして自分を応援してくれていたら心強いなと思う気休め程度だがそんな期待を少し抱いてしまった作品でもあった。

 

そのわずかばかりの期待が日々の自分の力になればいいなと、そんなことを思いながら一日一日を積み重ねていけば過去の自分に対する後悔も少しは捉え方が変わってくるのかもしれない。

あなたは過去にどんな思いがありますか。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。

もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです☆

「こころ」不完全な自分との葛藤

夏目漱石新潮文庫/代表作

        

あらすじ

明治末期、大学生の主人公は夏休みに海辺で「先生」と出会い交流を続けていく。「先生」は奥さんと下女と静かに暮らしているのだが、どこが人との関わりを避けそして孤独を抱えて生きている人なのだ。主人公が大学卒業後、実家の父親の病気のために帰省していたところへ先生から長い手紙が届く。そこにはかつて「先生」が親友Kを裏切り下宿先のお嬢さん(今の奥さん)と結婚したこと、そして「先生」の心の葛藤が綴られていた・・・。

感想

理想の自分と現実の自分、相反する矛盾した気持ち、そして孤独、

人間のありのまま過ぎる心を丁寧に描いた作品だと思う。

 

裏切られることの悲しみを知っている「先生」でさえ、

今度は自分の欲のためには裏切る側になってしまう。

そしてその後には自責の念で身動きが取れなくなるほど苦しんでしまうのだ。

 

完全に善にも悪にも心を振り切ることができないから葛藤する、

これが素の人間というものなのではないかと

「先生」は覚悟を持って自らをさらけ出すことで

伝えようとしてくれたのではないだろうか。

 

「先生」と親友Kは、矛盾する感情の置きどころを一生懸命探していた。

まとまりのない感情に必死に耐えようともしていた。

強い人間だったと思うのだ、決して弱い人間ではない。

 

ではなぜ「先生」と親友Kは、あのような一生を遂げたのだろうか。

それは恐らく限りなく真っ直ぐな人であったがために

自分自身をどうしても許せなかったのではないかだろうか。

眩しいくらいに誠実な部分と、目を背けたくなるような自分本位な部分と、

その差が大きいが故に苦しみもまた大きかったと思うのだ。

 

いっそ心を無にすることができればと思うがそれもできない。

結局、内にあるいくつもの矛盾を抱えながら生きていくしかないのだ。

 

波が寄せては引くようにいろんな感情が毎日波を打っている。

この自然に湧き上がる名もない感情と共に生きてほしいと願い

「先生」は主人公へ手紙を送ったと思うのだ。切実な思いを込めて。

 

そしてこの手紙(=作品)は同時に作者から読者へ向けられてものであり

なお100年あまりを過ぎた今もその思いは確実に送り届けられている。

 

あなたへ向けた作者からの手紙(=作品)を読み終えたとき心に何が残るだろうか。

最後に

命の灯を頼りに書き上げたような言葉をぜひ味わってみてはどうでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。                                       もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです☆

「変身」カフカ没後100年不朽の名作

フランツ・カフカ/角川文庫/代表作

あらすじ

ある日突然目が覚めると主人公のサラリーマン男性が虫けらになっていた。それまでは家族を養う側だったが養われる側になってしまう。初めのうちは心配していた家族だったが段々と厄介者扱いされ・・・。

 

感想

虫けらとは弱い立場の人を例えているのではないだろうか。

突然家族の誰かが病気や障害を抱えたとき周りはどう支えていくのか、               そして支えられる側になったほうはそれをどう受け止めていくのか。                                                            家族という密室の中でお互いのその接し方や心の変化について                  人間の本質がまざまざと垣間見える形で展開していく作品だと思う。

 

主人公が虫けらになってしまうことでこれまで抱えていた家族の問題が表面化する。            また新たな局面で今でいうヤングケアラーや共依存を想像させられる。                       歪んだ家族の関係がある意味家族としてつながりを持たせているようにも思える。                  だがそんな関係も限界に近づくにつれ愛情と憎しみが交錯しながら心も体も疲弊していく。 

 

不思議なのは主人公も家族も虫けらになった理由や元の姿にいつ戻れるのかといった疑問を持たないことだ。どうして起きてしまったのか自問自答しない。

恐らくあまりにも追い詰められている状態だからなのだろう。                          それだけ一瞬一瞬を生きるのに必死なのではないかと思う。                              そんな極限状態に陥っているこの家族の行動を誰が責められるだろうか。

       

主人公本人そして家族が救われるにはどうすればよかったのか。                            

100年前のカフカからそんな問いかけが聞こえてくるかのようだ。

 

最後に

カフカ節目の年にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。                              最後までおつきあいありがとうございました。                                        もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです☆              

 

「幸せへのセンサー」迷子になった心の軌道修正本

吉本ばなな幻冬舎

内容

吉本ばなな先生が幸せについて考えていることをエッセイ風にまとめた本。自分の感覚を取り戻すことの大切さ、そしてその感覚を取り戻すための小さいなヒントが詰まっている。

本来の生き物としてのセンサーを取り戻していくのが、生きるってことじゃないか。 軸足を自分に戻すことからしか、自分の幸せは始まらないと思うのです。                                                               引用:幸せへのセンサー/吉本ばなな/幻冬舎

 

感想

何かを決めるときに大事なのはこの本にある「生き物としてのセンサー」、自分の感覚、直感みたいなものだと思う。世間がとか、常識がとかではなく、自分はどうしたいのかということを自分自身に丁寧に聞いてあげること、思考で感情をなかったことにしないことなのだろう。

 

正しい選択なんてあるようでない。後悔しない選択があるだけ。だから正しさを求めるのではなく自分が望む選択をすればいい。本当は自分が選択した決断は全て正しいのだ。                 そしてその選択をした自分を思い切り信頼してあげればいいのだ。そんなふうに生きていけたらと思う。

 

困ったことに自分の感覚を取り戻していく過程で副作用が起きてしまう。これまでの人生において自分の選択が果たして正しかったのか考えても仕方のないことを考えてしまう。過去の自分の選択を悔やんでしまうことが。しようがなかったと潔く諦めて受け入れるまでには時間が必要だ。だとすればその後悔を抱きしめて生きていこう。                                        

何かを決断するとき、今自分のセンサーの針がどちらに振られているのか、自分の感覚からなのかそうではないのか後悔がある人ほど意識できるのではないだろうか。後悔の後味を知っているからこそ自分の感覚を大事にしたいと思えるのではないか。                                                                               そう考えると後悔の先に幸せがあるのかもしれない。そう思いながら生きていければ過去の自分の選択も肯定できる日がくるのかもしれない。

 

あなたのセンサーは幸せの方向に振られていますか。

 

最後に

目まぐるしく変化していく世の中で、                                                                              心の中に一人一人の幸せのセンサーを見つけられたらと思い紹介しました。                                                                   もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです☆                                                                     最後まで読んでいただきありがとうございました。

「キッチン」

吉本ばなな新潮文庫/ロングベストセラー

 

あらすじ

主人公みかげは唯一の肉親だった祖母が亡くなり、祖母が親しかったみかげと同じ大学の雄一とその母親(本当は父親)の家で突然一緒に暮らすことになる。                      奇妙で温かい同居生活の中で少しずつ祖母の死を受け入れていくのだが・・・。

 

感想

この小説では食事のシーンが度々登場する。                     食べることは生きることであり命をつないでいくことだ。                          だから特に食事のシーンでは一瞬一瞬を必死に生きていることが伝わってくる。                                                         心は悲しみでいっぱいいっぱいなのだけれど、                                                                        本能では未来に向かっていくような力強さが感じられる。

 

その食事を生み出す台所がみかげにとってこの世で一番好きな場所だという。                 みかげにとってそこは魂が宿るような場所なのだと思う。                                   食事を作るだけではない安心して自分自身に還ることのできる場所、                   そして体の底から生きる力が湧いてくるような場所。

 

みかげと雄一の関係は友達とも兄弟とも恋人とも言えない。                     2人にしか分からない距離感、                               儚い関係の中で互いに抱えている悲しみに向き合っていく。

 

身近な人の死という深い喪失感の後に、                                  やがて魂に少しずつ光が射し込んでいく物語をぜひ味わってほしい。

あなたにとってみかげの台所のような場所はありますか。                     

 

最後に

新潮文庫の100冊2024」で見かけて久々に読みたくなり手に取りました。                                                            もしよろしければ星をつけていただけるとうれしいです☆                                                                   最後まで読んでいただきありがとうございました。